東京のSPM年平均濃度が低下、東京大気裁判運動の成果
だが、区民調査でディーゼル規制後も喜べる状態でないのが実態
 04年8月12日、東京都が平成15年度大気汚染状況の測定結果を発表しました。SPM年平均濃度が自排局では大幅に低下したといいます。
 これは、東京大気裁判のたたかいが欠陥自動車NOx法の全面見直しを迫って、自動車NOx・PM法の制定になり、東京都を動かして1都3県のPM条例を作らせてきたことが、今回の測定結果を得たものです。東京の空気がきれいになってきたことは、東京大気裁判のたたかいの大きな成果です。
 しかし、手放しで喜ぶことはできない。例えば、東京都が成果を強調する自排局の6カ月(10−3月)平均濃度の推移はわずか13%の低減にすぎない。安心して暮らせる環境にはほど遠い結果です。
 東京の大気環境が余り改善されていないことは、今年3月25日、荒川区民が調べた「荒川区の環境」結果からも明らかです。二酸化窒素では、環境基準0.04ppm以上の箇所が6ヵ所あったこと。浮遊粒子状物質(SPM)では、最高値は諏訪神社の142μg/m3、12箇所の平均は129μg/m3。また、すべての測定地点で100μg/m3を超えたという。
ハハ SPMMの場合、1回のみの測定のため環境基準との照合は困難であるとしつつ、17ヵ所の単純平均は129μg/m3であり、場所も時期も異なるが、2003年3月25日の江東区の平均87μg/m3と比べても、ディーゼル規制後といえ、決して低くはなっていない。と、指摘しています。(下・3/25の調査報道記事)

 同調査の結果は04年7月16日、東京大気汚染公害裁判を支援する「荒川のつどい」で調査に協力した酸性雨調査研究会の権上かおる事務局長が報告しました。

写真左・7月16日、東京大気汚染公害裁判を支援する「荒川のつどい」で荒川区の環境調査を報告する権上かおる・酸性雨調査研究会事務局長
「区民が調べた荒川区の環境」全文PDF

「つどい」では東京大気裁判の原告・初山さんらがぜん息の苦しみ、生活の大変さなどを話し、黒岩弁護士から裁判の展望の報告もありました。
(写真下)


調べると一目瞭然、汚染濃度
大気汚染を憎悪する大型幹線道路、大規模都市開発
 また、単体規制をしても自動車の総量が増えると、大気汚染は悪化するというのが東京の道路建設、都市開発で実証されてきた常識です。ところが石原・東京都は、この教訓を無視して大規模な道路建設と都市開発プロジェクトを推進しています。
 例えば、道路建設では、3環状道路(圏中央、外郭道路、中央環状線に1兆五千億円)、環2・晴海に4000億円、第2湾岸ほかに6000億円、合計2兆5000億円を投じた大型幹線道路の建設を推進しています。(都の「都市づくりビジョン)
 都市づくりでも東京都は「都市再生」計画で高速中央環状線の内側地域とされる「センターコア」地域だけで秋葉原のITセンター(建設中=12万六千平方メートル)規模のビルを61棟もつくる計画です。都の資料によるとこの「センターコア」開発で1日、24万3000台もの自動車が増えるといいます。
 都市開発の様子をプロジェクトの写真からみたのが下記写真です。

汐留地区の完成予想図(「汐留地区開発プロジェクト
旧国鉄貨物駅跡地とその周辺で大規模な区画整理事業
旧国鉄貨物駅と神田市場の跡地などで土地区画整理事業が進む秋葉原地区
六本木ヒルズ
従前の六本木六丁目地区
民間で国内最大級の規模を誇る六本木六丁目地区の再開発事業
営団地下鉄南北線の新駅と直結する六本木一丁目西地区
従前の六本木一丁目西地区
2002年竣工予定の六本木一丁目西地区の完成予想図

上記写真、絵解き9点は右記HPより借用 http://www.token.or.jp/magazine/g200108.html

 こうした事業は、自動車の一局集中を促進して大気汚染を悪くするばかりです。道路、都市開発についても、見直しが必要です。 「つどい」で、酸性雨調査研究会の権上事務局長は墨田区の地の利である隅田川を活用した舟運、建設中のモノレールを有効利用して、安易に車に頼らない交通・物流体系の推進が重要と強調した。

資料 東京都が04年8月12日に発表した大気測定結果
平成15年度大気汚染状況の測定結果について

平成16年8月12日
環境局

 東京都及び八王子市が実施している大気汚染状況の常時監視の結果、自動車排出ガスの影響を強く受ける道路沿道に設置した測定局(以下、「自排局」)の浮遊粒子状物質(以下、「SPM」)による大気汚染が大幅に改善されました。
 また、二酸化窒素、光化学オキシダント、ベンゼン以外の有害大気汚染物質の濃度については、全ての測定局で環境基準に適合しました。
 詳細については、以下のとおりです。

平成15年度測定結果のポイント
1 SPM年平均濃度が低下、特に自排局は大幅に低下しました。
(1)年平均濃度
  一般局(47局)の平均濃度 0.032(0.033)mg/立方メートル
  自排局(35局)の平均濃度 0.039(0.043)mg/立方メートル
 (  )内は14年度の結果
(2)環境基準に適合した測定局の割合
  一般局 47局中24局適合(51%、14年度は40%)
  自排局 34局中 4局適合(12%、14年度は 0%)
  SPMの低下の原因は、気象状況なども大きく作用しますが、継続的な減少傾向は、自動車  
 対策などの発生源対策の効果だと考えられます。
 (図1参照)
2 二酸化窒素の環境基準に適合した測定局の割合は昨年を上回りました。
  一般局 44局中43局適合(98%、14年度は93%)
  自排局 34局中18局適合(53%、14年度は37%)
  自排局での適合率が50%を上回ったのは現在の観測体制が整備されて(昭和50年代以
 降)初めてのことです。
※「一般局」とは、住宅地域等に設置した測定局のことをいいます。

その他の結果
1 その他の物質の測定結果

(1)光化学オキシダント
 ・全ての測定局で環境基準に適合しませんでした。
(2)ベンゼン
 ・全ての一般局で環境基準に適合しました。
 ・自排局で環境基準に適合した測定局の割合は14年度と同様2局中1局でした。
(3)その他の項目は全ての測定局で環境基準に適合しました。
2 三宅島の噴煙による都内の二酸化硫黄濃度への影響
 二酸化硫黄については、三宅島の噴煙の影響を考慮し、都内の測定結果の短期的評価(環境基準:1時間値0.1ppm)を行っています。
 15年度は測定を行っている全局(一般局20局、自排局5局)で環境基準に適合しました。なお、14年度は一般局5局、自排局1局が基準に適合しませんでした。

SPMの測定結果から見たディーゼル車規制の検証
(1)大気汚染の改善状況を、環境基準値を超えた日数の減少で見ると、平成15年度は前年度に比べ約60%減少しました。(図2参照)
(2)都内で最もSPM濃度の高い環七通り松原橋測定局(大田区)において、平成15年度の年平均濃度が前年度に比べ約25%減少しました。(図3参照)
(3)ディーゼル車規制が開始された平成15年10月から16年3月までの半年間を、過去の同時期と比較すると顕著な改善が見られました。(図4参照)

〔資料〕
図1 自排局SPM年平均濃度の推移

 SPM濃度の低下の原因は、気象状況なども大きく作用しますが、継続的な減少傾向は、自動車対策などの発生源対策の効果だと考えられます。

浮遊粒子状物質濃度(自排局)経年変化

図2 環境基準値(0.1mg/立方メートル)を超えた日数の低減傾向
 SPMの環境基準は1日の平均濃度が0.1mg/立方メートル以下であることですが、ディーゼル車排出粒子の影響を受ける自動車排出ガス測定局では、環境基準値を超える日が減少し、特に15年度は大幅に減少しました。

1年間に環境基準を超えた日数(測定局1局あたりの日数)

図3 高濃度測定局の改善傾向
 自排局の年平均濃度は全体に減少していますが、都内で最も高濃度であり最も自動車の影響を受けていると考えられる環七通り松原橋測定局において、顕著な改善傾向がみられました。

環七通り松原橋測定局(年平均濃度)

環七通り松原橋測定局(月平均濃度)

図4 自排局6ヶ月(10−3月)平均濃度の推移
 平成12年度を基に推計したディーゼル粒子排出量の経年変化と、ディーゼル車規制が開始された平成15年10月から16年3月までの6ヶ月平均濃度の経年変化は、同様の減少傾向を示しており、15年度は改善傾向が大きくなっています。

ディーゼル粒子排出量と自排局SMP6ヶ月平均濃度

環境局HP全文:http://www.metro.tokyo.jp/INET/CHOUSA/2004/08/60e8c200.htm

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