2007年8月8日は、長く苦しい東京大気汚染公害裁判を共にたたかった、すべての人々の記憶に残る忘れられない日となりました。千葉から西淀川、川崎、倉敷、尼崎、名古屋南部と続いてきた大気裁判の総決算ともいえる東京のたたかい。奇しくも6年前の名古屋の解決と同じ日。この日原告団は、午後4時から高裁101号、続いて地裁103号の両法廷で勝利和解を確認しました。原告団・弁護団・実行委員会連名の「声明」を発表 ---- 和解成立の今日の日は、11年余にわたる長い裁判闘争の集結の日であるとともに、「誰もが安心して吸える空気」を取り戻すたたかいの新たなスタートラインである ----- との決意を表明しました。午後6時からは、文京シビックで記者会見と「緊急報告集会」を行いましたが、勝利和解成立の喜びと新たなたたかいの決意がみなぎるものとなりました。
東京大気汚染公害裁判
画期的な勝利和解について
原 希世巳
(東京大気汚染公害裁判弁護団 事務局長)
医療費完全無料化へ
今回合意された救済制度は、都内に居住するすべての気管支ぜん息患者に対して、その医療費の個人負担分を全額助成するものである。助成のための財源は、制度を主宰する東京都のほか、国と被告メーカー各社、首都高速道路会社がそれぞれ公害発生責任者として拠出することになった。制度の実施時期は未定であるが、遅くとも来年の4月ごろまでには、ぜん息医療費の完全無料化を実現させたい。ただし、この制度については5年後に見直しをすることとされている。制度を守り発展させる運動がない限り、5年間で打ち切りということになりかねない。この「和解」は東京公害患者会を大きくして、慢性気管支炎や肺気腫などすべての公害患者への適用など制度の拡充を求めていく新しいたたかいのはじまりでもある。
環境基準の設定検討
今回の勝利和解のもう一つの大きな成果は、微小粒子状物質(PM 2.5 )について、今年度中に専門家による評価検討委員会の検討結果をとりまとめ、その上で環境基準設定も含めて検討することを初めて国に約束させた点である。近年、わが国の大気汚染は改善されたといわれる。確かに平成17年度には東京都板橋区大和町交差点でもSPM(浮遊粒子状物質)は環境基準を達成している。しかし他方統計的には都内のぜん息児童は増え続けている。これはSPMよりもさらに毒性が強いといわれるPM 2.5 について、これまで何の規制も行われず、深刻な汚染が改善されてこなかったためである。
全面的な救済制度を
今回の和解によって、川崎市に加え東京都でぜん息患者の医療費救済が実現されることとなった。1988年に公害健康被害補償法(公健法)の新規認定を打ち切った国の公害政策の誤りを明確に示すものである。PM 2.5 の健康影響が明らかにされた今日、この点からも国は公健法並の全国的な被害者救済制度の復活に向けて早急な検討が迫られてているのである。 |